経営者に必要な能力(2)

前回、経営者に必要な能力として、二つ書きました。広い視野と経営当事者としての責任感です。

もう一つ私が大切だと思っているのは、経営が大切にしたいと考えている「会社を組織として進化発展させていく価値観」を明確し、その価値観に常に磨き続けることです。

誰にでもわかりやすい価値観をしっかりと作ることができれば、それに基づき誰がどこで判断してもそう大きくはぶれずに会社は進化し続けていくようになるからです。

つまり、こうした価値観を明確に共有することが当事者として責任を持った仕事をより多くの人が会社の中でなし得る条件になるのです。 

では、この組織を進化発展させていく価値観とは具体的にどんなものでしょうか。

ひとつは、何事を考える時も、引き算ではなく足し算で考えるようにすることです。つまり、理想像から現実を引き算するのではなく、目指すものをしっかり持ち、それを実現していくための手掛かりを見つけていくこと、を最も大切にすることです。

この手掛かり、というのは強み、と言い換えることも可能です。

とはいえ、理想像から現実を引き算する、つまり問題を発見すること自体を否定しているわけではありません。ただ、問題を発見することは必要条件でしかなく、問題を発見するだけでは何事も始まらないのです。主体的に行動するには手掛かりが必要です。この手掛かりが強みの発見なのです。

大切にしたい価値観の二つ目は、「何事を考えていく時も、ものごとのあたり前の前提と考えられていること自体をも常に問い直しの対象にしていく」という姿勢です。

前提を固定化してしまうことで、思考の範囲が狭まり、創造的な発想が制限されてしまうことが多いからです。

三つ目は「問題というものがない組織と言うのはあり得ない」という当たり前の事実をしっかりと認識し直すことです。

というのも、精神論に支配されている組織では往々にして問題はあってはならない、という建て前がすべての前提になって人々を縛っていますから、組織の進化発展には「問題があるのは当たり前」という当たり前の事実をみんなで確認することから始める必要があるのです。

つまり、どんなに良い会社であっても問題がない会社と言うのはない。もし良い会社というものの定義をするならば、それは問題のない会社ではなく、問題を顕在化させやすく問題の解決のサイクルが廻しやすい環境を備えている会社だ、ということです。

この考え方は失敗に対する考え方でも同じです。つまり、人間というものは失敗をする生き物である、名人でも達人でもまったく失敗とは無縁のユートピアのような人間は存在しない、というあたり前の事実から出発しなくては、失敗してはならない、という精神的な縛りにあってしまうのです。

経営は組織を進化させ発展させていく責任を持っています。だからこそ、こうした組織を進化発展させてくために不可欠の価値観を自分のものにし、組織の中に定着させていくことが必要だと私は考えているのです。