新しい本

神戸大学の金井さんとの共著本が、今、進行中です。先週の週末の連休を使って、序章の概観を大まかにですが書き上げました。

昨年の6月、神戸大学で行ったシンポジューム、元いすゞ社長の稲生さんと、同じく元部長の北村三郎さんと私、そして金井さんとで講演とパネルディスカッションを行いました。

今回そこで語られたストーリーを基に、金井さんと共著本を出すことになったのです。

20年前、いすゞで私たちがお手伝いした改革は、必ずしも成功したことばかりではありません。改革としてはかなり中途半端に終わってしまったと今でも悔恨の念が残る側面もあるからです。

もちろん、失敗ばかりでもありません。一年以上もかけて多くの開発のメンバーが議論を尽くし、車の開発のコンセプトを信頼と安全に置いたことで、素晴らしい車作りに成功したいくつもの事実をはじめ、開発という意味では多くの成功物語があったこともまた事実です。

この改革は、当時としては極めて珍しく、「やらせの原理」から脱却することを明確に掲げて行われました。

21世紀に入って、日本企業が抱えている最も大きな問題は、社員が会社に対するロイヤリティをあらかた失ってしまっていることです。他の先進諸国と比べても明らかにロイヤリティが低いのです。

こういうとき、当たり前ではありますが、上から、強引に「やらせ」で改革を試みても失敗するのは目に見えています。会社への信頼感があって初めて、無理な押し付けもそれなりに実行もされたのですが、信頼感がなくては、返事はしても、面倒な仕事は誰も本気ではしません。つまり、ロイヤリティーが低い時、命令で改革は実行できないものなのです。

そういう意味では、当時のいすゞは、まだバブルの崩壊する直前でしたのでどの企業も好業績を謳歌している中、例外的に大赤字になるという状況でした。経営に対する社員の信頼感も地に落ちていたのです。まさに、現在の日本企業が抱えている問題を20年前、先駆け的に抱えていた、ということです。

今、多くの企業はいくら強権を発揮して改革をしようとしても、効果が上がらず苦しんでいます。それと同じ状態にあったいすゞが、ある意味では日本史上初めて、「やらせの原理」を排して社員の自発性を引き出しながら、改革を試みたのです。

そういう意味では、20年前に試みられたいすゞの改革ですが、現代に通じる歴史的な意味を持っている、と思います。いすゞでの教訓が、成功も失敗も含めて今苦しんでいる多くの企業には大いに参考になるだろう、と思うのです。